2016年7月6日
熊本地震は、南阿蘇ルナ天文台にとって、文字通り「世界が一変する」ような大災害となりました。直面する厳しい現状、みなさまからの支援のぬくもり、南阿蘇への思い、そして心を癒やすの星空の美しさ。この震災のもたらしした現状と、そこから立ち上がろうとしている南阿蘇ルナ天文台の様子を、この連載にまとめていきたいと思います。
▲南阿蘇ルナ天文台が研修を担当した第4回JAPOS全国研修会in静岡(2016年)
「震災から立ち上がれ」〜熊本地震と南阿蘇ルナ天文台
第7回 復興への5つのプロジェクト その2
(その1はこちら)
《2.全国に類のないプロの天文解説者養成機関としての天文台にする》
A)「星のコンシェルジュ®」の知識や技術の向上を目指す
南阿蘇ルナ天文台には、「星のコンシェルジュ®」という天体観察会のスタッフがいます。
ホテルサービスを通して磨いた接客技術とホスピタリティ、共に自然に学ぶインタープリテーションの姿勢、そして天文の知識を総合して、天文台へ来られる方々へ「南阿蘇ルナ天文台」ならではの天体観察の体験プログラムを提供しています。今後は、充実させた天文機材を使ってますますその技術と知識を向上させ、他の天文施設では体験できない天体観察会プログラムを作って行きたいと思います。
▲天体観察会プログラムの組み立て
B)天文解説技術研修
「南阿蘇ルナ天文台」は、「星のコンシェルジュ®」の知識と技術を生かして、これまで4年間にわたって「JAPOS:日本公開天文台協会」主催の全国研修会を担当し、プロの天文解説者に向けた解説技術研修を行ってきました。そして今回を機に、《全国のプロ天文解説者のため研修機関としての天文台》という新しい役割を、積極的に担いたいと思っています。というのも、日本は400を超える公開天文施設を擁する世界一の天文台王国となっていますが、その公開活動を担う解説者のための公的な教育機関や・養成カリキュラムがまだ存在していないのです。これは美術館・博物館などの類似文化施設の状況と比べると非常に大きな問題であり、これに対して自発的・積極的にその課題解決に取り組む必要があります。そこで、新機能を備えた大望遠鏡を活用して、さまざまな天文台活動に対応できる研修活動を、他の天文台とその解説者に提供したいと思います。
▲JAPOS(日本公開天文台協会) 第4回全国研修会のようす
《3.南阿蘇の新しい文化創造と発信の重要な拠点としての天文台》
こうした天文台としての新しい機能と役割を持つ事により、「南阿蘇ルナ天文台・オーベルジュ森のアトリエ」は、熊本地震被災からの単なる復旧に止まらず、《南阿蘇の新しい文化創造と発信の重要な拠点のひとつ》に成れたらと思っています。
社会にとって長期的に価値をもたらすものは文化です。文化とは日々の暮らしや考えのあり方・様式であり、他の文化との違いにおいて、そこに成り立っているものです。
南阿蘇の復興とは、ただ道や橋が元通りになることではなく、あの日の熊本地震によってすでに元に戻る事はできなくなった文化(日々の暮らし方や考え方)を、後ろ向きではなく前向きに進め、他の地域との差別化においても確かな価値をもつような南阿蘇ならではの文化の魅力を、あらためて作り出すことだと思います。南阿蘇ルナ天文台のこうした活動が将来の文化資産・遺産となり、地域の豊かな資源のひとつとなるように、努力したいと思います。
▲森のアトリエ ディナーコンサート 毎週日曜開催
▲南阿蘇オペラの夕べ at 森のアトリエ 毎年開催
第8回へ続く
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