2017年9月10日
ラスカーラオーケストラの贈る
第178回ディナーコンサート
「愛のフルートデュオ」
演奏:
島田有純 (フルート)
安武美貴 (フルート)
柴田遥子 (ピアノ)
♬1. E.エルガー作曲 愛の挨拶
♬2. F.リスト作曲 愛の夢
♬3. E.ケーラー作曲 花のワルツ
♬4. L.デンツァ作曲 フニクリ・フニクラ
♬5. F.メンデルスゾーン作曲 “真夏の夜の夢”より スケルツォ
♬6. F.ドップラー作曲 アメリカ小二重奏曲
連載:西洋音楽史と音楽家たち
第18回「ヨハネス・オケゲム」
南阿蘇ルナ天文台・森のアトリエ 宮本孝志 2017.09.10
フランドル(オランダ南部、ベルギー西部、フランス北部にかけての地域)出身のギョーム・デュファイやジル・バンショアなどの音楽家がブルゴーニュの宮廷で活躍し、ブルゴーニュ楽派と呼ばれてルネッサンス音楽の幕開けを告げたのが15世紀の初めころでした。
その後も、彼らに続いてフランドル出身の音楽家たちが多数現れて、15世紀の中ごろから16世紀末まで、全ヨーロッパで音楽を主導していくことになりました。これをフランドル楽派と呼びます。その期間は150年ほどにもおよび、これはクラシック音楽の主流である近代のバッハからワーグナーまでのドイツ楽派の規模にも匹敵するほどです。
そのフランドル楽派の初期を代表する作曲家が、ヨハネス・オケゲム(1410頃~1497)です。
アントワープの教会聖歌隊長などを務めたのち、フランスの宮廷楽長になり、フランス王シャルル7世、ルイ11世、シャルル8世に仕えて、バス歌手として、またポリフォニーの大家として知られていました。
14曲のミサ曲など、今日に伝えられている曲の数は多くはありませんが、その音楽は、各声部の旋律が切れ目なく分厚く積み重なっていき、その豊かな表現力と並外れた作曲技法によって、独自の感動的な世界を築いています。音楽家として、当時のヨーロッパでは抜きんでた存在であり、篤い尊敬を集めていた作曲家だったのです。
その死に際しては、多くの音楽家たちが哀悼歌を捧げました。
とりわけ、オケゲムの音楽史上の後継者とみなされる大作曲家ジョスカン・デ・プレの作品は有名で、「運命の神は、オケゲム、あの音楽の宝ともいうべき方を捕らえてしまった。さあ、ジョスカンよ、ブリューメルよ、ド・ラ・リューよ、コンペールよ。悲しみの衣をまとい、今は亡き父をいたんで、涙しよう」と歌いました。
歌の中に出てくる名前は、すべてオケゲムに続いた有名な作曲家たちであり、彼らから父と慕われたオケゲムは、後にやはり交響曲の父と慕われたパパ・ハイドンのような存在だったのかもしれません。
参照:皆川達夫「中世・ルネサンスの音楽」、ヴァルター・ザルメン「音楽家409人の肖像画」、岡田暁生「西洋音楽史」他