2016年6月22日
熊本地震は、南阿蘇ルナ天文台にとって、文字通り「世界が一変する」ような大災害となりました。直面する厳しい現状、みなさまからの支援のぬくもり、南阿蘇への思い、そして心を癒やすの星空の美しさ。この震災のもたらしした現状と、そこから立ち上がろうとしている南阿蘇ルナ天文台の様子を、この連載にまとめていきたいと思います。
ドローンで空撮した南阿蘇ルナ天文台
熊本県の南阿蘇村に建つ「南阿蘇ルナ天文台・オーベルジュ森のアトリエ」は、今年で宿泊施設創業から30周年、天文台オープンからは20周年を迎えた民間の施設です。そして、私はオーナーの宮本孝志です。
少年のころから星が好きだった私は、大好きな南阿蘇の自然の中に移住し宿泊施設の運営を始めた時から、いつか多くの方たちと星や宇宙を一緒に楽しむことができる天文台を作れたらと思っていました。そして、銀色に輝く天文台のドームはその夢の象徴だったのです。
天文台と北天の日周運動
ところで、従来は大きな天体望遠鏡を持つ天文台は、県や市など自治体が作るべき公共の施設であり、多大の建設資金と運営費がかかるので、とても民間では建設も運営もできないと思われていました。そこで、私が天文台建設の夢を周囲に打ち明けた時には、それは本当に夢物語だ、リスクが大きすぎると大反対を受けました。しかし、私が思ったのは、文化の先進国である欧米では、文化は国民が自分たちで作り自分たちで担うものであり、お上(かみ)から下されるものではないのではないか、工夫次第では、日本でも文化施設としての天文台の建設・運営が可能になるのではないか、という事でした。
そこで、全国の天文台を廻って多くの方から意見や提案をいただき、また思案を重ねて計画を練りました。そうして、さまざまな困難を乗り越えて、ようやく夢がかない、1996年にオープンした鉄筋コンクリート3階建ての南阿蘇ルナ天文台の望遠鏡は、肉眼の1万3千倍の集光能力を持つ、口径82㎝、高さ6メートル、重さ11トンという九州最大の望遠鏡になったのです。
九州最大の天体望遠鏡と、宮本オーナー
こうして今日「南阿蘇ルナ天文台」では、才能と志にあふれるスタッフ達と一緒に、付属の宿泊施設である「オーベルジュ森のアトリエ」を、おいしいフランス料理と素敵なサービスによる魅力的な宿にする努力を重ねながら、宿泊していただいたお客様には、毎夜南阿蘇の素晴らしい星空の下で、時にロマンティックに、時に科学的な好奇心をもって、星の世界を散策する独自の解説プログラムを、楽しんでいただけるようになりました。
幸い、そうしたコンセプトと運営面の努力を評価していただき、多くの方に支えられながら、昨年は過去最高の数のお客様にご来館いただきました。
南阿蘇ルナ天文台と冬の天の川
ところが、こうして天文台の活動を20年間続けていたこの春、当館を震度6強の地震-熊本地震が襲ったのです。