blog

LunaWay 私たちの哲学

2025年8月30日

logo03

Luna Way -私たちの哲学-

私たち(南阿蘇ルナ天文台・Luna株式会社)は

このように世界を捉え、理解し、行動する

 

(2025年2月1日 公開)

1. 理念

~なぜ私たちは存在し、なぜ行動するのか~


人類は、誕生以来星空を見上げ、人智を超えた宇宙に畏敬の念をいだきつつ

多くの生命が織りなす地球環境の恵みに感謝しながら、生きてきた。

私たちは、この宇宙や大地とのつながりを意識して暮らすことが

人びとの人生の質(Quality of Human Life)をより高めて

幸福 (Well-Being )の度合いをさらに深めることを知り

その体験・創発の場の、創造と共有を通して

さまざまな社会課題の解決に取り組み

 新たな文化・社会を作るために

ここに集まり、行動する。

2. ビジョン

「星空の下で幸福に暮らす」

 

◇ 人類誕生以来の「星空の下で幸福に暮らす権利(生き方)」を取り戻す

◇ 天文台すら不要となるような「宇宙と人間がつながる世界」を創る

 1−1. 失われつつある星空

人類が地球上に誕生して以来数百万年、夜空にはいつも星が輝いていました。

その長い年月のほとんどは、焚き火を囲んで寝起きする野外の生活でした。数千年前に、家の中で暮らすようになっても、戸外に出れば夜空には満天の星があり、それが人間の自然な生活の一部でした。

それが、わずか数世紀前に始まった近代化と資本主義の世界によって劇的な変化が起こりました。夜空は人工光で明るくなって星は消え始め、現代においては、天の川を自分の目で見ることができる人の数は世界でも半分ほど、日本では4分の1ほどに減ってしまいました。

人間にとって、そして生物にとっても生得の環境であった星空。

人間にとって社会的な共有資産(コモンズ)でもあった星空を奪われていることは、まさに命ある人間としての幸福(ウェルビーイング)が奪われていく、そんな現代という時代を象徴する一つの現象と言えるのではないでしょうか。星空が見えるような暗い夜を過ごせなくなったことと、人々の心身の健康が実際に深く蝕まれつつあることの間には強い相関関係があることを多数の研究や報告事例が示し始めています。しかし、多くの人々はそのことにまだ気がついていません。

 

1−2. 生得の権利を奪ったもの

ではいったい、誰がこの生得の権利を奪ったのでしょうか。

幸せと健康を願い、それを約束してくれると信じてきた「豊かさの幻想」に、今私たちは気づきつつあります。

人間の欲望をかなえることが豊かさである、物質的に豊かになることが生活や心の豊かさを実現すると、私たちは思い込んできました。しかし、所有と消費をあおる社会の在り方や、それを良しとする私たち自身の生き方が、他ならぬ私たちの幸福の権利を奪っていたことに気付き、一部の人々はその思い込みから目覚め行動をはじめました。

私たちは、「星空の下で幸福に暮らす権利 」を、人類誕生の時から持っています。

それは、単に「光害のない暗い夜空」を取り戻す権利、ということではありません。たしかに、過剰な商業・消費主義による無用な光で溢れている現代の夜の世界を、適切な暗さに戻すことは、生命にとって生物学的にも大きな意味があります。

しかし、それと同様に重要なことは、「星が見えなくなった星空」に象徴されるように、すべてのものがデジタル化され、絶えず何かと比較され、そして何かを達成しなければと追い立てるような「今の社会のあり方」を見直し、「心静かで満ち足りた幸福な生活」を取り戻す権利がある、ということなのです。

すなわち、現代の文明のあり方を見つめ直し、私たちの生き方を変えることで、この奪われていた権利を取り戻すことが、今や私たちが直面する大きな課題となっているのです。

 

1−3. プラネタリーヘルスとウェルビーイング

「プラネタリーヘルス(人類による自己中心的な過干渉を廃し、人類を含む地球上の自然が将来にわたり継続できる調和の取れた地球環境)がもたらす美しい星空」と、「ウェルビーイング(人間として幸福に暮らすこと)」との間には、私たちの気がつかなかった関係・つながりが、たしかに存在しています。

そして何より、宇宙と私たち人間は、とても深いところで一つにつながり合い、宇宙は、けっして単なる鑑賞や客観的観察の対象ではありません。私たち人間をその懐に抱く母なる大地である地球も、宇宙の一部であり、またあらゆる存在と同じように、私たち人間も宇宙の一部なのです。

 

1−4. 星空からの贈り物

しかしながら、そもそも星が見える夜空や自然生態系も、そして人間が人間らしく幸福に暮らす社会性も、元をたどれば人間が自分の力で勝ち取った権利ではありません。

それは、所有する”権利”のようなものではなく、人類が生まれた時から与えられていた、かけがえのない自然や生態系からの贈り物、すなわち「星空からの贈り物」だったのです。

古来人間は、そうした自然の恵みを受け取りながら、そこに「大いなる畏敬の念と深い感謝の気持ち」を抱きつつ、自然と人間が将来にわたり継続できる調和の取れた生活圏を作る智慧を持っていました。

しかし、傲慢になった近代的自我は、それを当然の権利だと思い込み、自然環境のみならず自分たち人間自身をも単なる利用価値として消費しようとした挙げ句の果てに、何よりも大切だった人間性を失ってしまい、この便利でありながらも殺伐とした世界が作られてしまったのです。

 

1−5. 新たな世界を創る

そこで、近代的な科学技術を基礎に造られる社会と、自然を尊重し共に生きる古来の人間の生き方が、融合し両立する、そのような新たな文化・文明を実現することが、現代に生きる私たちの最も重要な課題となっているのではないでしょうか。

私たち一人ひとりが、星空の下で暮らし宇宙とのつながりを意識し、何気ない日常の中でそれを実感することで、人智を超えた壮大な世界に私たちが(その一部として)生きていることを、みなが当たり前のこととして知る世界を創っていけるでしょう。

 

1−6. 公開天文台がその役割を終える

ところで、もともと天文台は、星の世界を観測し、知り得た知識を伝えることで人々の世界観・宇宙観をつちかい、そこに社会のあり方と人間の生きる意味をつむぐことが目的でした。

ところが近代以降、合理的で科学的な宇宙像を提供することを重視するあまり、そこに生きている人間自身の意味を軽んじ、対象となる物質世界の探究のみにいそしんでいなかったでしょうか。そして、所有するモノによってのみ人々の豊かさを計る今の世界に、結果的にくみしてしまっていたのかもしれません。

しかし、このように人々が「星空の下で幸福に暮らす」地球がよみがえることによって、ちょうど病気が無くなることで、病気の無い社会を作ることが目的であった病院がその役目を終えるように、現在の公開天文台もその歴史的役割を終えて、自然に不要なものになっていくかも知れません。そして、人々と宇宙のより深いつながりをもたらす新たな場が生まれ、その役割を担っていくのではないでしょうか。

 

1−7.  私たちの願い

こうして、宇宙と人間がつながった新たな世界がおのずから創られ、地球と人間は、本来あるべき成長の段階へと回帰して、新たな一歩を踏み出すことになるでしょう。

そうした調和の取れた幸福な人間社会(ウェルビーイング)と、健全な地球環境(プラネタリーヘルス)をみんなで実現し、支えていくこと。

そのような想いに共感する仲間たちと志を共有し、それぞれの一歩を踏み出し、共にその歩みを続けていけることを、私たちは心から願ってやみません。

3. アジェンダ

Lunaの具体的行動

 

▪️体験と創発の場の提供

・宿泊型天文体験プログラム「Luna天文台浴ー星空からの贈り物」を実施し、多くの一般の方へ提供する
・星空の下で自然を五感で感じ、古来人間たちが抱いてきた人智を超えた宇宙に対する素朴な畏敬の念と感謝の気持ちを直接体験し、思い出し、新たな認識と理解を創発する場を創造する。

 

▪️社会的課題の解決

1)調査研究

・天文解説技術&プログラムの調査研究

・天文体験を通したウェルビーイング(心身の健康と社会的幸福)回復と向上の調査研究

2)研修活動

・博物館や公開天文施設等の解説者への研修活動

3)開発と実装
・天文台浴の開発

・社会的処方としての天文台浴の社会的実装

 

▪️新たな文化・社会を作る

・資本主義の次に来る世界

幸福を求める主体である人間そのものや地球環境すらも単なる資源として利用し、さらなる資本の蓄積のみを図ろうとする、そのような現代の行き過ぎた資本主義のあり方を問い直す。

・ネオ・アニミズム

この壮大な宇宙・世界と、その中で相互依存によって存在している人間・社会を、心ある人間として体験的に捉え直し、あらゆる存在が生き生きと脈打つ世界観を、科学的知見と先住民たちの知恵とが融合したネオ・アニミズムとして再構築する。

・ウェルビーイングとプラネタリーヘルス

そして、健康で幸せな人間活動(ウェルビーイング)と地球環境との調和のとれたあり方(プラネタリーヘルス)を探求し、実際に行動しながらその実現を図る。

・贈与経済

資本主義社会における経済活動(お金を媒介とするモノ・サービスの市場交換)と、先人たちから伝わる贈与活動(感謝の気持ちを伝えるモノ・コトの贈与とその交換)とが併立した贈与経済を、事業として構築し実践していく。

4. 「Luna天文台浴ー星空からの贈り物」

方法論:4つの基本ステップ

 

私たちは、星空宇宙や地球の自然環境から計り知れない恩恵を贈られながら、普段それを当然のこととして気づかぬままに過ごしています。ストレスに満ちた現代人の生活を根本的に変えるには、この素朴で単純で、しかし社会を作る人間として最も基本的な気づきを取り戻すことがまず必要です。
その理解から生まれる「この世界への驚きと、生きていることへの感謝の気持ち」が、私たちを囚われているしがらみから解き放ち、新たな生きる力に目覚めさせるでしょう。

 

1)[出会うー体験]

最初の始まりは「星空からの贈り物」 (最初の先行贈与、天然自然からの純粋贈与)

・宇宙から、すべての存在は存在を許されている。人類・人間もその一部である。

・AWE体験として研究が進んでいる。

 

2)[気づくー理解]

宇宙への返礼贈与

エピソード:「熊本地震の夜」

その夜の事を、私たちは決して忘れる事はないでしょう。

夜空は一面の銀の星ぼし。停電でまったく灯りの消えた南阿蘇の地上世界の上には、例えようもなく美しい星の世界が広がっていたのです。朝まだきの高原の冷気の中で、ものを言わない星たちは、しかし静かに圧倒的な存在感でそこに光っていました。

そして、私は今さらながらハッと気がついたのです。

当たり前だと思って過ごしている人間世界の日常は、実は仮の姿だという事を。
人類が生まれる前から存在しているこの地球、そして人類が地上世界から消えてしまった後でも輝き続けるであろうこの星空。その宇宙の姿が今ここにあるのだと。
そして、私たちがこれまで、天文台で毎夜人々に伝えていたのは、人間を超えた大きな世界がある事、それを知る事でもう一度人間の世界の大切さが見えてくる事ではなかったのかと。
天文・宇宙を知る事がいかに大切であり、また実感を伴った体験が人生においていかに貴重であるのか、身を持って感じ、本当に理解した瞬間でした」

 

・宇宙から、すべての存在は存在を許されていること、人類・人間もその一部であったことに気づくこと。

・私たちが失ってしまった「星空の下で幸福に暮らす」生き方や世界とは何であったのかを、謙虚に問い直すこと。
・美しい星空や自然生態系も、人間が人間らしく幸福に暮らす社会性も、元をたどれば人間が自分の力で勝ち取った権利ではない。それは、所有できる”権利”のようなものではなく、そもそも人類が生まれた時から与えられていた、かけがえのない自然や生態系からの贈り物、「星空からの贈り物」だった。
・宇宙と私たち人間は、とても深いところで一つにつながっている。

宇宙はけっして単なる鑑賞や客観的観察の対象ではない。私たち人間をその懐に抱く母なる大地・地球も宇宙の一部であり、あらゆる存在と同じように、私たち人間もまた宇宙の一部なのだ。

 

3)[解き放たれるー畏敬の念と感謝]

「星空からの贈り物」に対して、私たち(南阿蘇ルナ天文台)は、畏怖と感謝の念を抱いた。

・古来人間は、自然の恵みを受け取りながら、そこに「大いなる畏敬の念と深い感謝の気持ち」を抱きつつ、調和の取れた生活圏を作る智慧を持っていた。

・万有引力を発見したニュートンは、かつて言った。

「私は、真理の大海を前に、海辺で遊んでいる子どものようなものだ。」

永遠に人類に授けられている「星空・天然自然からの贈り物」に気づくことによって初めて生まれる、生きとし生けるもの、さらには物言わぬ万物にさえ捧げられる「畏敬の念と感謝」。

それこそが、実は人間としての「根源的な生きる力」そのものを生み出していた大元であったことを、あらためて発見し深く認識することがとても大切だ。

 

4)[回帰する][ペイフォワード →メッセージ →アジェンダ]

現実世界に立ち戻り、さらに有意義なものにしていくために、「3)」で受け取った畏敬の念と感謝を、次の受け取り可能な人たちへ贈り物として受け渡す(ペイフォワード=他者への返礼贈与)ために、社会にメッセージを贈る(アジェンダ)

①宇宙とのつながり

「調和の取れた地球環境(プラネタリーヘルス)がもたらす美しい星空」と、「人間として幸福に暮らすこと(ウェルビーイング)」との間には、私たちの気がつかなかった関係・つながりが、たしかに存在している。

②人類生得の権利ー星空からの贈り物

「星空の下で幸福に暮らす」権利を奪ってしまったこの文明や文化、そして他ならぬ自分たち自身に対して、あらためてそれが自然からの賜物であり、人間の一部であり、人類生得の「権利」であったことの正当性を主張すること
③取り戻す努力

私たち自身の努力によって、再度これらの恩恵がどこから来ていたのかに体験的に気づき、その実体験を伴った感謝の気持ちによって、調和の取れた社会と地球環境を取り戻す努力を始めなければならない。

④贈与の循環

人間・社会はこの自然からの贈り物から始まり、今でも人間・社会のあらゆる活動はそうした贈り物から成り立っているという「気づきの体験」を、すべての人々と社会生活の中で感謝とともに分かち合い、何度も贈りあっていくこと。そのような社会を創ることによって、次なる新たな文化・文明が形作られていくことだろう。

5. ムーブメント

5)[賛同者]

「4)」の贈り物を受け取り、共感や賛同、感謝の意を表明(返礼贈与)してくれる賛同者の方がたが現れる。そして、クチコミやSNSのいいね、コメントなどを表現し、ムーブメントへのメッセンジャーになっていく。

 

6)[ムーブメントの開始]

・メッセージに応えて、それぞれが活動を始め、ムーブメントが開始される。
 ①自分の身近で、自分なりの活動を始める
 ②ムーブメント内の一つの活動として開始された個別の組織活動(例:Lunaの活動)に参加する 

 ③ムーブメント自体への積極的な関与をする

6. Lunaの企業活動

市場交換と贈与交換の併立

 

7)[体験プログラムの提供]

(以下は、⑥2)の続きであるLunaの企業活動として)

・賛同の声への返礼として、感謝の気持ちを込めて、賛同者に実際に天文体験をする機会(贈り物)の提供を申し出る。天文体験プログラムの企画、商品化、販売を行う。

 

8)[体験への参加]

「星空からの贈り物」を形にして体験できるようにするLunaからの提案(メッセージ)への返礼として、賛同者(企業活動にとっては客に変わる)が商品として購入し、当館に実際に来館される。

 

9)「体験プログラムの実施]

それに応えて、私たちは天文プログラムを企業活動の商品サービスとして販売・提供し、体験の贈り物をする。賛同者は客として、自分たちの体験を通して私たちからの贈りものを受け取る。

 

10)[交換贈与と市場交換の併立開始]

「⑧」への返礼として、客からは感謝の言葉が返される。と同時に代金が支払われ、ここで初めて、感謝の気持ちの「贈与交換」とお金を媒介とする「市場交換」とが併立し、贈与経済が始まる。

 

11)[交換の循環]

今後、「⑨」で始まった併立した関係「贈与経済」を、どのように矛盾なく継続して循環・展開していけるのかが、私たちのテーマとなる。

 

12)[Lunaにおける、企業活動としての交換贈与の制度化と市場交換の具体化]

私たちは、以上の一連の交換活動への返礼として、以下のように贈与の返礼と交換を継続的に行なっていく

 ①互いに、感謝のメッセージをオンライン、オフラインで贈ったり、また天文体験に伴うウェルビーイングやプラネタリーヘルスの最新情報を交換したりして、継続的に交流する。

 ②経済的価値の市場交換の中で、このような贈与と商品サービスがハイブリッドされた「星空ギフト券」などを贈与ペイフォワード実施の一環として提供し、ⅰ)自分自身へ、ⅱ)大切なひとへ、ⅲ)見知らぬ誰かへ、と市場経済の中でのさらなる贈与の連鎖をサポートする。

 ③その他にも、事業の中で制度化された交換贈与をできる限り経済的行為の中に織り込んで、必ずしも結果(リザルト=経済的利益など)を追求しない、贈与の連鎖と交換の中に、人と人とが感謝でつながることに意味を見出す社会を構築していく。